伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十回
優秀賞
小学生の部
めだまやき食べないわたしをにらんでる
だれよりもこうふんしていた海の波
本だなの本は寒がりだと思う
水ぞく館魚が見るのはヒト科ヒト
妹は歌って歩くきもだめし
ねたきりの祖母の口びるふれてみる
手にのせてこんなに軽いかぶとむし
中学生の部
貝殻の中にも一つ海を見る
虹が出た虹の根元を掘りまくれ
しもやけを父にふまれて大げんか
赤い実がパチンとわれた十四歳
鰯雲空一面の大家族
冬の山えんぴつだけで絵を描ける
いつだって私は東風になれるのよ
高校生の部
人は鳥鳥は魚をゆめ見てるかな
どの方向に進んでもなぜかむかい風
つきぬけろつきぬけろ秋の青空
紅葉見て次の日絵の具買いに行く
制服が白衣にかわる春がくる
七月を抜いた浮き輪がぺっちゃんこ
本当の空が来ている冬木立
大学生・専門学校生の部
この恋と冬眠しよう癒えるまで
近付いた匂いで分かるふるさとよ
秋の蚊の飛んで来るなり理髪店
あどけないアイツを変えた月明り
切りすぎた前髪つまむ入学式
原爆忌はだかのままサイレンをきく
銀杏の目をした猫が溶ける庭
一般の部A (40歳未満)
寒いから象に逢いたくなるのです
鈴の音も投げ込んでいるどんどかな
昼の月夢をみている大海鼠
病む吾子とテレビの雪に触れてみる
雑炊を吹いて強気の人となる
盲目の詩人みたいに象眠る
月光を一点でうけ瓦斯タンク
一般の部B (65歳未満)
こころなき身にもあはれは八頭
エンジンが焼け少年の夏果てる
猫の餌ばかりを置いて妻の旅
雪が降る前に空気が澄む不思議
着ぶくれてまあるく角を曲りけり
鯰の眼小さ過ぎ口大き過ぎ
ねこじゃらし痒い処に届かない
一般の部C (65歳以上)
銀行の前に遍路の道しるべ
あの虹の脚見にゆこう鳥になろう
アイロンの余熱も着込む花衣
分校にかぶさってをり春の山
想ふ人の二人目に入り踊りけり
大根干す円空仏の笑いかな