伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十回
ユニーク賞
にゅうどう雲へんしんしながらきえてゆく
いもうとはプニプニしててきもちいい
かつどんが空をとんでる絵をかいた
こわいゆめおきたらねこがむねのうえ
はつゆめをわすれてしまいひるねする
会話する文字が出そうな白い息
友だちとあそぶ時間は音速だ
節分のおに役母がやればいい
なまはげも熱いお茶のみえがおかな
鬼は外あまりまくなと母が言う
へいにはりつくのどからからのカタツムリ
大根も「個大根差」があるんだな
温度計見てもう一度寒くなる
英語から瞬時になじむ大阪弁
雪だるまとけだしなぞのにが笑い
大そうじ一皮むけたぼくの家
静電気パチッと指にかみついた
合体だでんでんむしむしこたつむり
どこからも見ても花火の裏みえず
十五夜にコンパスで書いた丸い月
試験後の気分はいつも朧月
雪合戦さそった姉をねらいうち
教科書の横に小さく鏡もち
天国に一番近いふとんの中
うぐいすをどこに隠そう二条城
鹿の目の優しさにせんべい渡します
くもり窓指でなぞって晴れにしよう
じいちゃんにばあちゃんのせたような鏡餅
授業中まぶたの上にぞうが乗る
積み上げたこたつの上のみかん塚
我が弟流れ流れて桃太郎
水仙は群れてそれぞれよそ見する
地球から吹き出る青の無精ひげ
ほくろから毛がはえてるよお父さん
消しゴムのかすを集めて充実感
紫陽花の根っこの下はミステリー
わがはいは舌と背だけがねこである
ゆりの木が大きな月を釣り上げた
冬の朝皆勤賞を裏切れず
独楽回し昔の少年には勝てぬ
サイダーが気持ちをシュワッと楽にする
お正月ベルトの穴も新しい
初夢を枕かかえて思い出す
塀の上新年連れて猫二匹
ペンギンのポーズで歩く寒い冬
空を見て雪に向かって口あける
逆さまに切手を貼って「会いたいね」
合格を母に知らせてもう一度見る
大根引大地と祖母の一本勝負
使用済テレカの分だけつのる恋
初出勤見慣れた景色も異空間
バスタブの中は小さなエーゲ海
蝉泣いてナマコのように眠る猫
恋猫や弥陀半眼の真正面
大根をぐつぐつ煮て待つ愛もある
口紅をぬって気合いを入れる朝
夏椿天然素材の少女です
育児書になき春愁や子の無口
笹舟にそっと手を貸すあめんぼう
空豆の上下左右を確認す
カバ見てる卒業前の無重力
持ち歩くうすき財布や日脚伸ぶ
初夢に目覚めて我は我であり
節分の鬼ともならず残業す
不揃いの秋茄子焼いたり煮たりかな
蜂の巣を見てて読経の長からず
定年やからすの言葉おぼえけり
すぐ眠くなる晩年のつくつくぼうし
チューリップ描けばやっぱり蝶がとぶ
聖しこの夜妻は居眠りしてをりぬ
女湯と天井つなぐ一寒灯
冬青空指でパチンと割つちやおか
寒い朝少年たちはプラスチック
マネキンの毛皮を脱がす特売日
風の走る音なり二月の雑木山
逢瀬たのしき噴水の伸び縮み
野火かけて神代の人になりにけり