伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第九回
ユニーク賞
ししまいはくちからてがでてこわかった
いちごジャムぬったらパンがてれちゃった
はがぬけたトンネルひとつまたふえた
マラソンできじより高い母の声
ゆきがふりヤッタヤッタのぼくのあさ
家のやねつららのピアスでおしゃれする
父さんと口ぶえふいてたねをまく
和だいこを胃で聞いている音楽会
おんどけいおこったときにせのびする
北風が赤い耳をかんでいく
雪たちはきょかなく町におりてくる
雪の道気持ちばかりが先へ行く
授業中よそ見して見るみかん山
卒業式先輩の背から蝶が発つ
薄氷をわるかわらぬか考える
数の子が口の中で暴れてる
世界の森増毛体験したいころ
夢でならいつでも会える人がいる
祖母の家プラネタリウムをただでみる
年の暮れ満員御礼冷蔵庫
編んだけどあなたの首は予約ずみ
うぐいすや規則正しき頑固者
部屋そうじ捨てにくいなあ良いテスト
校則を破るおいしさ春のチョコ
こたつには睡眠薬が入ってる
卵黄がつぶれるごとく日がしずむ
小さな欠伸月はもう半透明だ
金魚すくい破れて少しほっとして
除夜の鐘そば食う音に負けている
ぽかぽかと幽体離脱授業中
きっと虹出そうな光時雨やむ
バイトして七草の時期やっと知る
寒い日は胃袋だけがよくうごく
心と手別のときあり毛糸編む
幼き日布団の上は海になる
缶詰めのなかでふたりは桃になる
ドーナツの穴まで喰らう乙女かな
ねじを巻くようにオレンジ絞る朝
電池切れ消え入りそうな赤い月
録画も保存もできないこの雪がいい
折り紙の手つきで餃子を折る娘
『さん』なんてもういらないよ夏の海
地雷もつ君に踏み込めないでいる
恋人と呼ぶには早い水着跡
この亀は明治維新を見てるかも
水鉄砲手とり教えて撃たれけり
白南風やヘアトニックは微香性
夜神楽や出番待つ子のたまごっち
猫の恋あるじ捨て置くこと三夜
ヒーローのごとく外套はおりけり
五十キロ全部預けて南瓜切る
白ばかり干して灯台守の夏
部屋中に森を呼び込む青畳
解せぬことばかりざぶざぶ髪洗う
わたしから逃げるつもりの夏帽子
不況の街を恋猫が独走す
にこにこと茸山から現れる
シャネル5番父玉砕の地にて買う
太陽を切りとる四角干布團
デパートという水中花の中に入る
霧深し新聞少年丸く行く
ままごとに招かれ座すや花莚
やとわれて案山子の如く店頭に