伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第三十六回
佳作
無駄じゃない動画を見ているこの時間
門松や軒を連ねて風正す
「またね」と言う声をかき消す梅雨の音
冬の夜鯨が紡ぐ海の詩
宿題が進まず手だけ冷えていく
雑魚寝していつまで青き空を飛ぶ
子の輪には境界線が見当たらず
導火線心の焦げる匂いがする
冬の猫つや美しき一家族
肉球のさくさくと鳴る霜のあしあと
潮の匂いそろそろ始まる君と夏
急ぎすぎ地球は秋を忘れてる
かじかんだ付箋の生えた単語帳
不確かな先の道筋朧月
朝補習イヤホン越しの蝉時雨
君のマフラーの巻き方を盗む
ドリアの匂いだから今日は火曜日
祖父母つれ階段見上げる初詣
年越しや小さくジャンプその刹那
農業科相手にされない秋化粧
ぽつねんと一本だけが秋だと言う
卒業や皆勤賞も誇りなり
恋人と自転車乗らず横並び
冬麗らまた会いたいと手を合わす
扇風機悩みを飛ばしてくれないか
しんしんと海風しみる助手席
ひっつき虫友とかけっこあたたまる
天からの迎えの西日窓のネコ
今はただ酔って痛くて夜桜に
春風のかおりをまとう逆さ富士
失ってまた失って枯れ木かな
焼き秋刀魚箸で切開手術する
ありがとう毎日つけたマスクさん
傘忘れ彼の右肩濡らす夏
春の雲流れるさまに救われる
春風と揺れるつり革みぎひだり
春風に誘われ斜め４５度
忘れっぽち凹んだソファーはあなただった
赤くなる空と紅葉と君と僕
見上げたら涙光らす月の夜
悩み尽きぬ編み長くなりゆくマフラー
三番線定刻通りに春来たる
青嵐君の話を聞き逃す
夕焼けを呑み尽くしたる曼珠沙華
夏木立早く会いたい金曜日
甘酒を飲みながら行く文京区
初仕事心臓ぎゅっとなる受話器
高尾山はずむリュックに春近し
片耳を動かす猫や秋の暮
得意気に歌ふ二歳児春隣
