伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十二回
審査員賞
新入生妹がいるあの中に
新入生の一団をじっと見ていた作者。妹があの中に居る筈だ。眼をこらす。妹に対する姉としての愛情がとても自然に表現されています。このような状況、場面、体験を俳句に詠まれた。すばらしいことですね。
詩を読むと足がかってに行く未来
すてきな俳句でした。季語が入っていないのが、惜しいのですが、それでも、私の中では最高!こんな時代、想像力は強い味方。どんどん行動しましょう。おめでとうございました。
しばられず遊べる夏をもう一度
コロナ禍で夏休みが不自由だった子供たち。特に十三歳では切ない。ただし一生に一度の大切な時間を「もう一度」という意味では、大人の私たちの日々も変わらずそうなのだと教えてくれる。縛られずにいたい。
マスク越し表面上はいい関係
コロナ禍で、人と会うにも話するにもマスク越しの日々。マスク越しの付合いは他人行儀で、どうも血の通ったものにならない気がする。表面上は取澄ましたいい関係でも、マスクの下でどんな表情をしているものやら。この時事諷刺が句の面白さだ。
鉄棒にもたるる箒春の雲
鉄棒に箒が立てかけてあるだけの光景ですが、校庭の掃除用の柄の長い箒だと分かります。鉄棒の向こうには水色の空、そして春の雲。軽く作っているように見えますが、擬人化を映像にする技術は中々のものです。
シトラスの香り濃くあり積乱雲
まるで音楽のようなリズム、メロディを感じました。そして、一編の小説のような印象も残りました。
メレンゲのスプンの春のワルツかな
メレンゲ、春、ワルツ、丸山さんが摘まれた言葉たちが軽やかに句の中で踊っています。旅や詩からインスピレーションを受けて、メロディを書くことが多いのですが、一曲出来そうなほど、感性を刺激させてくれる一句です。
軽トラに僕と案山子と雨合羽
雨降りのなか、これから農作業に出かけるところでしょうか。私はこの「僕」が若者ではなく、お年を召してもなお軽やかにダンディなおじいさまだと読み取って、ときめいてしまいました。
のどけしや猫の悩みを聴く係
猫にも悩みがあって、それを聞いてあげるという、なんとものんびりした暮らし。余裕たっぷりで、このご時世にはうらやましいような暮らし方を感じさせます。「のどけし」というのが、少し余計ですが、作者の伝えたいことは十分に理解できます。さらに精進されるといいです。