伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十二回
佳作特別賞
洗顔で水が知らせる冬構え
つくしんぼ切っても切っても負けず嫌い
名もなき家事に名前を付ける夏休み
「うちのひと」と言えて初めて蕗を買う
あそぶ人はたらく人も夏の駅
ねこの子がねらっているなひみつ基地
寒凪や水に映れる青と青
テンポよくラリーの音なる体育館
雪女のように息を吐く私
細長いあくびをひとつ山笑ふ
冬の部屋ぬくもりくれる猫とパソコン
パソコンのゲームを開いて寝正月
折り紙を折って追いかけ飛行機雲
夏草や寸志なるものいただいた
お年玉にぎったままの昼寝かな
どんぐりも私もモデル秋の影
卒業と共に空き部屋画びょう跡
風鈴が聴きたしニューヨークもそぞろ
葉が落ちてはだかんぼうの冬の街
寒い朝ロボットのように動く指
燃え尽きるろうそくの芯秋のよう
切り株や年輪のない獅子の国
希望だけ詰め込みノート閉じる春
明日の事金魚に内緒話して
全景のわれも一点今日の月
球体のはてなき旅路天の川
万華鏡手に捕らわれた夏景色
秋の雨無人の窓に泣いている
清掃員落ち葉と秋を掃いていく
行方なき我も旅人細雪
青簾本にこぼれる午後日差し
梵鐘の霞むはてなき甍屋根