伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十二回
佳作特別賞
祖母と猫まあるい時間が流れてる
再会を果たす十月レモンの日
おはじきをはじいて生れし冬銀河
ため息にそっと寄り添う月明かり
プラチナの月を磨いて観覧車
入学式マナーモードの武者震い
少年から青年少女から黄蝶
黒南風や箸のみ動く食事会
腰落としスケボ少年春陽へターン
堂々と蓑虫暮らしピザ届く
春風のリボンで結ぶ贈り物
子が描いた鳥が来ている春の庭
犬たちが好む電柱冬の朝
ふくろうに三百六十度の闇
燕来る電池を換えた歩数計
焚き火爆ぜ蛍のように舞う火の粉
大好きだ四月の教科書めくるとき
英単語書きなぐる夜や猫の恋
夏芝を削り飛びゆく楕円球
水たまり大きな空を閉じ込める
群青に響くかけ声徒競走
制服を何度も着てみる新入生
青映える未来目指して渡り鳥
カヤックの上から見える水平線
秋刀魚焼く士月に合わせよと
てふてふや自由とわがままを違ふ
冬の駅色とりどりの布の花
枝豆を解凍しながらする通話
背を向けて何を言っても夜寒かな
甘夏の白き小花をまびく風
星の下君のイヤホンはんぶんこ
甲子園もぬけのからの空を見る
青草や集う仔牛の濡れた鼻
ふんわりと春をふふんだ寝ぐせの子
ふわふわの仔犬のような春キャベツ
有翼の獅子仰ぎ見てヴェニスの空
山々に線彫り版画のような雪
秋天を模型飛行機裏がへす
土筆ん坊どの子の空も晴れ渡り
白玉や家族全員朝ねぼう
夏期講座合間は恋の話して
茶柱を倒さぬように冬の朝
雪柳乱るることが自己主張
オレンジの光の正体かぼちゃだよ
見えたのはあなたがはいた白い息
友の手へひとつのカイロがリレーする
流れ星君と一緒にとりにいく
ぬくぬくとみかんに追われる夢を見る
滝桜空に浮かぶよ蜘蛛の糸
鼻上げし木彫りの象や虎落笛