伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十二回
佳作特別賞
稲妻に素手で挑むぞ恋したぞ
目に見えぬ人の心に雪が降る
どこまでも百人一首がついてくる
陽炎に過去の自分が問いかける
地下室のレコード鳴らず寒の入
初浴衣見てほしいのは顔じゃない
休日のふとんの重さは五百トン
風光る折り目新しレシピ本
暖かいぬくもりの「ぬ」の響き良し
年賀状あいつのスポーツ刈りを知る
万緑の中を突き刺す相模川
水中で手繰り寄せても朧月
大寒波赤いマフラー受けて立つ
消毒をしてから入れるお賽銭
筑前煮ハートのにんじん母の愛
おしるこの湖にある白い月
枯蓮の姿にも似た人の影
満月や私をこの世に不思議な引力
新緑の古都が流れるバスの窓
風光る洗ってほしたぬいぐるみ
突然の現金書留お年玉
「元気かい」林檎ぎっちり段ボール
教科書に頬杖の影初夏の午後
東風が吹き新世界へ背中押す
青春の裂けた想いは石榴の実
最寄り駅風花降って歌手気分
筆太くキャンバス大きく描く夢
年の暮録画容量足りないな
年明けてこっそりしゃべるかがみもち
火照る頬花火の光のせいにする
片思いカカオの割合75
冷蔵庫に同じプリンが並ぶ夜
桜散る素振りの肩に背中にも
たこ焼きの形バラバラ忘年会
止まってよ時計はいつも反抗期
携帯に合格の文字映ってた
曲がり角右を向いたら春が来る
金魚鉢私とお揃い青フリル
携帯に入ったヒビの様な僕
画面越し一秒前の君に会う
笑いじわ映る鏡を今日も拭く
ジャンプ台選手は雪を微分せり
卒業式自画像だけが笑ってる
妻つわりしてやれるのは家事くらい
満月や十年前のニキビ跡
秋の夜やカント分かった気になりぬ
初電話乱反射せし喃語かな
おつかいに卵も託す秋日和
夢語る卒寿の祖父の踊る筆
内定や剪定された寒牡丹