伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十二回
英語俳句の部 大賞
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Long-distance running
I don't want to do it
Long-distance running 訳/ 長距離走ぼくはやりたくない長距離走校庭を走る長距離走をイメージしましたが、長距離走はなかなか終わりがなく、しかもマスクをしていて息苦しいので、好きではありません。しかしそれは今のコロナ禍と共通すると思い、それらを併せて、学校生活での自分の正直な気持ちを表現しました。また同じ語句を二回使って俳句らしさを出そうと思いました。
「予算は31万円しかないから大事に使え!」 短歌の師匠は、歌作りを経済活動にたとえて、ぼくを指導していた。俳句の予算ときたら、もっと少なくて17ぽっきり。英語でもHAIKUは一番短い定型詩であり無駄なワードは禁物。となれば第三十二回のこの大賞作品は駄句だろう。長距離走という、俳句に向かない題材だし……いや、しかし、にもかかわらず、名句だ。主人公はイヤイヤながら部活をやらされ、そのしんどさを中心に据えて、あり得ない反復を使い、これまでの作句のメソッドを壊した。「無駄使い」ではなく「離れ業」だ。 (選評 アーサー・ビナード 日本語訳 星野 恒彦)
英語俳句の部 優秀賞
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remove the mask
I saw it for the first time
my friend's face 訳/ マスクをはずして初めて見たわ友の顔 -
First sunrise
A drone takes a picture
of the Tower of London 訳/ 初日の出ドローンが撮るロンドン塔 -
Due to coronavirus
My class door was taken away
North wind blowing now 訳/ コロナウイルスのせい教室のドアが取りはずされいま北風がビュービュー -
in an unfamiliar land
I found
hometown apples 訳/ 異郷で故郷のリンゴを見つけた -
Please take me to school
But my true wish is
Time with father in the car 訳/ 私を学校まで送ってでも本当の望みは車中での父との時間 -
anniversary photo
my father smiles
at last 訳/ 記念写真お父さんがようやく頬笑む -
taking a break
I hold my breath to hear
the mountain's voice 訳/ ひと休み山の声を聞こうとかたずをのむ -
busy pond
students with backpacks
watch the turtles 訳/ にぎやかな池バックパックをしょった生徒らが亀らを見ている -
more kids
than pieces―
maple fudge 訳/ 子どもの数が個数より多い―メイプルキャンデー
英語俳句の部 審査員賞
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the laundry
after it's folded up
full of personality 訳/ たたまれたあとの洗濯物は個性ゆたか洗濯は基本的な家事ですから、いろいろと詠まれています。でも、取り込んで畳まれた洗濯物を、オブジェのように見ている所は新鮮です。「個性ゆたか」はそれを着る人の個性の反映か、畳んだ人の個性の表れか、読み手の想像をかきたてます。
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pet shop
I look at a puppy
a clerk looks at me 訳/ ペットショップぼくは子犬を見る店員はぼくを見るペットショップのストラテジーは巧妙だ。売られる商品の子犬や子猫を広告塔に使う。冷やかし客を「飼い主」に変えるための引力は、愛らしい円らな眼から発せられるのだ。作者は子犬の視線にほだされてじっとlookしている。店員もまたlookに集中するが、それは客の心理の経過観察だ。
英語俳句の部 後援団体賞
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strawberry fields
the sunburnt faces
of the farmworkers 訳/ 苺畑農場労働者たちの日焼け顔