伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第二十八回
佳作特別賞
白髪染め止めし頭にあげは蝶
あの谷が笑い皺らし山笑う
雲海の流れの早き師走かな
部屋干しの洗濯物も春を待つ
譲りたる仔犬賀状で里帰り
咲き満つる金婚の日の八重桜
夫ありて今朝も湯気たつ根深汁
大きいぞ耳で見ている遠花火
はなまるの数を増やして卒園す
清貧を諾ひ妻と仰ぐ虹
朝顔や古希の手習い棋譜並べ
シャワーから湯が出るまでの物理学
ありつたけ冬灯ともして一人膳
無花果やもう食べごろと下を向き
唱歌ほどには団栗の転がらず
煮凝や母の笑顔をくしゃくしゃに
校長も一年生も一人かな
竹の葉にふくら雀が似合う雪
婆ちゃんの声の弾みてクロツカス
消印の押されぬまゝにゆく秋よ
卒業はまだ先のこと喜寿米寿
ほんとうのところは聞かぬ日向ぼこ
バイク便コトリと春を入れて去る
水鉄砲ぼうず頭の敵味方
朝寒やスプーンのひかる日曜日
女子会の鮟鱇鍋を食べ尽くす
山茶花を散らせコミュニティバスが来る
月がいて昔語りの二人膳
げんげ摘む園児に蜂の光るかな
コスモスの海原分けて一両車
治癒礼に野崎参りの春の川
水面にて大欠伸する金魚かな
秋日和京都一日乗車券
春一番南の島より転校生
走り根の大地もみ上ぐ大暑かな
熱燗や夫には夫の孤独あり
ひなたぼこさがしてもらえそうな場所で
真っ白な母の髪梳く良夜かな
己が身の影たのしめり揚羽蝶
階段を二段飛ばしに冬落暉
雷鳴が野菜畑を黙らせる
ころげ落つ一粒までも山椒の香
強くなれ孫に勧めるほうれん草
ポケットに薬いっぱい着ぶくれて
あの案山子かつては軟派だったかも
一椀に籠る潮騒雑煮餅
鮟鱇や顎の力を残し置く
万歳の形で浜の荒神輿
身のたけに生くる幸せ花は葉に
打ち水に濡れてはしゃいで園児の輪
