伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十八回
佳作特別賞
雪景色はしゃぐ主人にまた恋す
ジャングルジム天辺登り卒園す
辛い今日明日は辛いと限らない
マフラーをほどいた首に陽を巻いて
この闇を切り裂きそうな三日月だ
しぐるるやゴールキーパーひくく待つ
七月のだらしないほど長い猫
お雛様出しっぱなしにしたいパパ
ふみしめる氷の下の息吹あり
一筆にかける思いと炭の濃さ
年賀状読めぬ名前の子が増えて
発表会かわいいオオカミ踊り出す
ネギ刻んでも刻んでも消えぬ恋
言いそびれていることがあります蝉しぐれ
旧姓を知ってる人と春の月
つくしんぼ春一番の背比べ
ハッカ飴砕けて広がる冬銀河
秋空をクロワッサンのような雲
芽が出たよ!君の心も育ってる
子と同じ歳を重ねて花水木
柱傷八つの私見つけたり
反抗期そっと置かれたプレゼント
リフォームで明るくなった部屋と嫁
大丈夫言えば心が大丈夫
どんぐりに肩を叩かれ気が変わる
蔓ひけば空より灯るからす瓜
川面ゆく月の涙を手にすくう
苦と楽の重なり見ゆる巣立ちの日
牛突きや陽炎の立つ隠岐の島
雲雀鳴く白杖止まる石畳
十六夜に宇宙と話すインターフォン
母という鎧を脱いで酒交わす
猫の居るせいにしている春炬燵
通り雨映画みたいに君がいる
折り鶴よ未来へ届け千の意思
老農夫少年となり蝶を追う
入学式今日から兄妹違う道
巻貝に秘密告白夏の夜
裸木に黄ボール一つ残りけり
君の手を日差しの温みごと握る
日盛りに白い歯きらり郵便夫
父親の湯呑みで覚えた魚へん
残業は致しませんと冬陽落つ
映り込む冬の車窓に老けた顏
冬に入る体に鍵をひとつ掛け
ネクタイを締めて闘う顔になる
点滅の青に急かされ歳暮るる
子と並ぶ双子のような雪だるま
よく食べて忘れる家系栗ごはん
マスクの目ばかりの医院待合室