伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第二十八回
佳作特別賞
まだやれる深呼吸した旅の空
夕焼けよいつまで恋しているんだい
秋の蝶玄関ゆっくりと閉まる
鳴く猫を追いかけて行く紅葉かな
朝夕の陽を連ねたり吊し柿
雪合戦誰より本気のおじいちゃん
レコードの針落つ雪はしんしんと
沈丁花同じ香りの彼の服
雲ひとつ浮かべたるやう雑煮かな
太陽と友達だった古帽子
言い訳を考えたのに流れ星
肉を焼く男の背中夏盛ん
鯛焼きに残る小さな歯型かな
母の日や絵本のよごれやはらかに
君の袖触れた気がして金木犀
過去よりもこの先よりも今この時
ノンシュガー上手くいかないこの人生
ばちばちと燃える薪の音子守唄
たんぽぽの綿がスーツでひと休み
洗濯物ゆつくり干して小春かな
冬日和一本杉の沈黙す
冬空に息を凝らして流星群
寒空に仰げる影は鳶かな
就活で頭いっぱい夢いっぱい
甘えたい母へと渡す耳かき棒
金木犀私の心の消臭剤
冷凍庫いっぱいにして待つ婆ちゃん
「寒い！」って笑うあなたが冬の季語
白いシャツあなたの心が透けて見え
目をこすりとにかくレタスをかじる朝
月と起き太陽と寝る反抗期
告白の花を買う路地霧の雨
草青むガードレールの忘れ物
風運ぶ春の香りと清き夢
幸せはこれかと気づく子の寝顔
金木犀香りで気づく空の青
静寂に包まれ寄り添う雪うさぎ
待ち遠し心が躍る蝉の声
ブロッコリーに恋する朝のマヨネーズ
毬栗の道を忍者のごとく行き
潮干狩り祖父の熊手が太く見え
靴擦れも夢の続きの終電後
独り暮らし話し相手は金魚だけ
途中下車無人の駅に蝉しぐれ
思い出を貴方と作り春を待つ
ひとつずつ剥がす付箋や卒業す
黄昏にぼんやり浮かぶ朧月
空風に切れる唇鉄の味
まだ若いそんな言葉に口つぐむ
朝一番冬の匂いを独り占め
