伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十八回
英語俳句の部 大賞
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freshly mown grass
clinging to my shoes
my muddled thoughts 訳/ 刈りたての芝生が靴にくっつくまとまらない私の考え日本語学習の時間に英国人の俳人の方が来られ、ワークショップを開催しました。俳句のテーマを探すために皆で外に行き校庭を散策することになりました。俳句づくりは初めてで、どんなことを書いてよいかも分からず、どうしようかと友だちと話しながら芝生を歩いていた時、ちょうど靴に芝が付いていたので、そんな状況を俳句にしました。
とても斬新で鮮やかな句です。通り雨が降ったあとに、刈られたばかりの芝生の上を歩くと、芝が靴底に貼りついてくる。一本一本微妙に異なる緑色をした芝は、靴底でランダムなパターンを描く。芝生の上を歩きながら人生の出来事について考えていた作者は、ふと、靴底のパターンに気づき、それが自分の複雑な考えを反映しているように思えてくる。“muddled thoughts”(まとまらない私の考え)という表現はとりわけ巧みです。
英語俳句の部 優秀賞
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my pencil
and my eraser
battle on the desk 訳/ わたしの鉛筆と消しゴムが机の上で戦う -
Foggy bridge
a car
floats 訳/ 霧の立ちこめた橋車が一台ただよう -
In the zoo
in a cage
in a dream 訳/ 動物園の中檻の中で夢の中 -
summer vacation
on the wall of classroom
calendar has been tilted 訳/ 夏休み教室の壁にカレンダーがかしいだまま -
first snow
sticks to the window
of the ferris wheel 訳/ 初雪がくっつく大観覧車の窓に -
Like the salmon
swimming back home
I am here 訳/ 生まれる故郷へ戻りくる鮭のように私はここへ -
farmers' market ・・・
among the vegetables
a cricket chirps 訳/ 農家の市・・・野菜の間にコオロギが鳴く -
mountain summit ―
back bent by the weight
of stars 訳/ 山頂―星々の重みで曲がる背中 -
sea breeze
a sandpiper
rearranges itself 訳/ 海のそよ風イソシギが一羽羽づくろいをする
英語俳句の部 審査員賞
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a leaf
falling through
a child's look 訳/ 一枚の葉子どもの目の中を落ちていくある秋の日、澄んだ大気の中をひらりと落ちた枯れ葉が、空を見上げていた子供の視野に入る。その枯れ葉が落ちたときに、その子が居合わせた偶然の一瞬を捉えた句で、穏やかな秋の日の情景を鮮やかに描き出している。
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an aimless stroll
pockets that slowly fill
with small round stones 訳/ 目当てもなくぶらつく丸い小石でだんだんふくらむポケット漫然たる散歩のつもりが、いつの間にかポケットが丸いきれいな小石で一杯に。ほとんど無意識に眼と手が働き、習性になっているのでしょう。長い充実した人生に、ためこまれた思い出の数々をも想像させ、奥の深い句です。リズムのよい表現に、S音がひびきます。
英語俳句の部 後援団体賞
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The proud rooster
Ignores the rain
He shines with his own light 訳/ あの威張る雄鶏は雨を気にしない自身のひかりで輝き