伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十六回
佳作特別賞
吊し柿誰かが食うてまた減りぬ
白壁に桜の映えし朝の城
夕蛙母の座っていたあたり
若者は小顔になりし福笑
一村の風の出口の刈田かな
無花果の割けて列島晴れ渡る
着やせする服を選びて更衣
潮さびの声を掛け合う荒神輿
朝食の前に母屋の雪下ろし
陽の匂い懐紙に挿みお年玉
素通しのエレベーターへ夏の月
夕焼けにさよならを聞く地平線
夢ばかり食べて遊んでとんぼの目
うたた寝を孫も真似して眠る春
猫じゃらし風に小耳をくすぐられ
思い出もあたためている七種粥
水切りの手先におどる初夏の海
故郷の母へ連なる冬の虹
奥山の樹になるまでの日向ぼこ
操り言の語尾に相槌春炬燵
冬瓜や半透明の明日がある
書斎まで銀杏を炒る匂ひかな
シャンソンを歌ふ女の柚子湯かな
読みさしの頁の行方昼寝覚
市民課の窓口に置く福寿草
会いたしと賀状に書きて二十年
煩悩を払ったつもりでアイス買う
故郷吐いて故郷を吸うハーモニカ
菜の花の冠つけて六地蔵
ウグイスが般若心経聴いている
幸せと気付くのはあと式部の実
クリスマス浮かれた街に紛れ込む
曲線を正す直線春の水
富士山がもう新年の顔でいる
鳥の巣を置き去りにして冬木立
春の宿魚のひらきに顔二つ
瀬々らぎの水に誘われ谷戸の春
満月がとろーり秘密洩らしそう
フルートの音色になった青い月
ぶつぶつと恋のはじめの田螺かな
構図は決まり菜の花と一輌車
四十年変わらぬ文字の賀状来る
しゃぼん玉あの泣き虫が二児の母
毛糸玉大和ことばの似合う母
ランドセル不安も少し入れる春
大根の青きなで肩いかり肩
急ぎ足斜めに嗅いでキンモクセイ
菩提寺も田畑も抱き山眠る
焼芋を割って湯気より食べ始む
寺町に好きなカレー屋帰省の子