伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十六回
佳作特別賞
金魚鉢見え隠れする晴れ着かな
鈍行の一日がかり秋の暮
恋猫の争ひのあと鈴ひとつ
しゃぼん玉ボクの不思議が風に乗る
妖精の一人となって春の山
学び舎の更地となりて揚雲雀
種袋ふるさとの名の書かれをり
ストレスの糸を張ったりゆるめたり
ふるさとをまるごとはこぶ青レモン
書初の筆まつすぐに立ててをり
一体の龍となりけり雪解水
団欒の鍋の薬味は冬将軍
笹船を友と浮かべた島の春
帰省待ち日がな一日回遊魚
ゆっくりと好きになる人春の雲
背のたけを越される春の影法師
初雪やラッシュアワーの靴の跡
夢ひとつ握っておよぐ天の川
朝焼けに上弦の月置き去りに
貸切りの店をはみ出すラグビー部
望郷の遠く近くを虎落笛
大根の荒らされしあと蝶が舞ふ
一人旅銀河の果てへ夢乗せて
つい知らぬ人と拍手を初日の出
ごんぎつね駈け抜けそうなすすき原
春一番手加減頼む三部咲き
葱汁や母の話にまた戻る
行く春やトロイメライでまどろみて
影の足短くなりて如月に
短編の恋物語閉じ晩夏
引き潮の踵くすぐる潮干狩
首まわしごほんと父の年の暮れ
嬉しさに跳ねた気がする月うさぎ
エンジンの音がドミソになって春
子が巣立ち賀状に猫の名を添える
すぐそこに地平線あり秋の風
遠足のバスが大きな寝息立て
春の泥同じ歩幅の続きけり
四月から鳥の目線の街に住む
不都合は聞こえないふり蝉しぐれ
猫の恋七堂伽藍知り尽くす
日だまりの床いっぱいに一両車
開墾の汗で染めたり菜の畑
とんぼ来て追分地蔵は鼻痒し
冬眠のまあるくあまく眠りをり
半纏を布団の上に年の暮れ
留守の間に花瓶のあやめ咲きにけり
神々も妖怪も来る焚き火かな
橋の名をいくつ憶えて都鳥
赤い実も白い実も食べ冬の鳥