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受賞作品

伊藤園 お~いお茶新俳句大賞

審査員賞

浅井愼平選

入道雲さて何しようと走るぼく

東京都 吉政 尊盛 10歳

入道雲は少年の日のシンボルだ。入道雲を見ればこころが動く。衝動に駆られる。それは希望にもたとえられる。だから、作者の「ぼく」は何かをしようとして走るのだ。

金子兜太選

人の時間地球といっしょに回ってる

沖縄県 吉本 大祐 14歳

地球といっしょに廻っているものはたくさんあるわけだが、わざわざ「人の時間」と念を押した理由は、ほかの生きものとは違う時間、ということだろう。作者吉本君は沖縄の人。沖縄の負の歴史の記憶がこびりついている。それを言いたかったのだ、と私は思った。

武田双雲選

ばあちゃん家言葉の壁を越える夏

東京都 松本 ありさ 17歳

「ばあちゃん」という親しみのこもったフランクな言葉と「言葉の壁を越える」という深みを帯びた言葉が掛け合わせられて、絶妙な句に仕上がっている。年齢や言葉の壁を超えて繋がるばあちゃん家体験。記憶が鮮明に蘇りました。

吉行和子選

空振りが夏を二つに切っている

石川県 小田 道夫 31歳

すかっとして気持ちのいい句だと思いました。ホームランではなく、空振り、というところがいいのです。でも勢いは半端でなく、夏を二つに切っている、と言いきってしまう。頼もしいです。

阿川佐和子選

柚子風呂で難しい顔の一歳児

神奈川県 河村 文 35歳

昔から、赤ん坊はときどき哲学者のごとき気難しい顔をするものだと面白く思っていた。この句を読んで、幼い弟をお風呂に入れたときの情景を思い出した。赤ん坊との日常のささやかな瞬間を切り取った微笑ましい一句である。

黒田杏子選

夕立の匂いがわたる虹の橋

茨城県 奥田 律次 38歳

夕立が立ち去ったのです。さーっと涼しくなってここちよい大空に虹が懸かりました。あたりには夕立の名残りの雨の香が漂っています。美しい虹の橋を夕立の残り香が渡ってゆくと感じとった作者の感性は見事です。

倉橋羊村選

秋風や空にひらがな地に漢字

静岡県 山下 博己 61歳

秋風の吹く季節。落葉が空に舞い上がってひらがな模様を描き、地に落ちては動かず漢字模様で静まり返る。そんな秋の風景。空の動と、地の静の対照で、落葉を通した秋の季節の動きをとらえている。作者の年輪にふさわしい境涯感ともみえるような風景。

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