伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十四回
佳作特別賞
冒険に出かけたくなる入道雲
ハイヒール脱ぎ揚羽蝶の野を渡る
月光の底に無口な雪兎
たんぽぽになってあなたのそばにゐる
夕暮れに寂しき猫と梅ながむ
一歩前一歩前へと初詣
初恋がまだ浮かんでる海がある
柚子ふたつ入れて荷物のふた閉じる
履歴書のまぶしき余白夏木立
ここからはお国訛りが聞ける駅
抜け道は宇宙へ続く木下闇
敬語から始まる恋やかき氷
春うらら弁当箱の茹玉子
目の中に星描けそうな達磨市
冗談のつるりとすべるなめこ汁
窓枠にアゴを並べて雪景色
さえずりやきらきらの下で読む手紙
雑踏をぬけて色なき風に会う
一人住む母への電話切りがたし
ぶらんこの軌道を放れ星の国
寒明けるどんな色にもなれそうな
時計よりゆっくり過ぎる母の家
あたためてお返しします冬の息
父がいて母がいてほら蕗の薹
謎解きの閃きのよに福寿草
靴下の数だけしあわせクリスマス
雪だるまはにかむようにとろけ往く
檸檬切る婚礼布団届きけり
枝垂れ梅母の高さに引き寄せて
白梅の角を曲がって帰郷かな
児等の靴脱ぎ散らばりて日脚伸ぶ
書初や萌葱の紙に伊勢のうた
散歩道犬友達に柿もらう
このさんま上目遣いで俺をみる
霜焼の治りて指輪はめにけり
ブラブラと足が届かぬ子の足湯
ブランコを漕いでペガサス捕まえる
愛犬と会話が弾む老い二人
ママよりもでっかく描く土筆かな
萌え出ずる若葉のような入園児
介護者を呼ぶ鈴の音や冴え返る
二ん月や扉をひとつ開けてみる
家系図をたどればアンドロメダ星雲
満天の星と混浴旅の宿
山眠るニーチェの言葉唱えつつ
みな西を向きて暮れゆく秋桜
逆光の黒板窓に春立てり
着ぶくれの奥にダンテを入れている
白化粧落としてみても雪女
あと少し地下でそわそわチューリップ