伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第十九回
佳作特別賞
ランドセル開けては閉める一年生
脱走の埃引きずる甲虫
眼を閉じて飛び込む水の深さかな
同窓会いつのまにやら生存会
虹つかみ繩跳びしたい雨上がり
つり革に春の眠りがぶら下がる
真夜中に百合は香りを整える
風薫る町の小さな音楽祭
ブランドの花瓶一輪野を活ける
あやとりの小さな手から天の川
陽炎に教わっているフラダンス
ははの日の母ひらがなで呼んでみる
秋の海振り返つてなどやるもんか
恐竜の足の形の落葉踏む
丁寧に生きてゆきたし若葉頃
しなやかに負ける日もあり秋桜
地球抱き拍動を知る熱帯夜
スイミングひとときだけの人魚姫
恋愛はバケツの中のかに二匹
母在らば八十三粒の年の豆
露草や生き方もっとあったはず
美男子をいつも夢見る雪達磨
スッピンの妻に偽装を発見し
柿の実にかぶりついてる夕陽かな
狛犬の吠え出しそうな大暑かな
大空へ風を梳きたる芒かな
春隣パンフレットの光りけり
編み手止め絡まる糸に明日の夢
今焼きし父かと風花を仰ぎ見る
この穴はブラジル行きの蟻の穴
紅差して今日の私ができあがる
しゃぼん玉ちいさな嘘をひとつだけ
寒卵しづかに息をしてゐたり
途中下車そこから始まる旅もある
じゃがいものでこぼこ匂う母娘
口いっぱいの銀河広がる金平糖
緑蔭にままごとの椀残りをり
身のうちを夢はみ出して花火かな
夕焼けをスカーフにして散歩かな
耳鳴りを一瞬消して小鳥来る
まんじゅしゃげ祖先の田んぼに人が住む
大寒や枝のかたちに鳥止まり
初孫に似た面持ちの野の仏
絵の具まだ塗り終わらずに卒業す
冬野菜全部煮込んで祖母になり
主婦という選択肢あり花八つ手
お迎えはカボチャの馬車にしてほしい
なにもかもこぼれおちさう春着の子
薫風やヘップバーンになってみる
お茶会の椿は助演女優賞
