伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十五回
都道府県賞
千葉県
弟に暑いふりして上着貸す
元旦の家族写真がてれくさい
伸びをするたんぽぽ・なずな・つくしんぼ
白い息吐いて見つけた一番星
雪だるま日陰につくり孫を待つ
東京都
まだ来ない平和という名のお正月
天高く草まっすぐに二十歳かな
てらてらと日を引きずって秋の蛇
赤とんぼ風のすき間を上下する
売場より被りてゆきし夏帽子
神奈川県
とびうおが空と海をぬいあわす
ハムスター楽譜で昼寝春の予感
元旦の電話に混じる牛の声
九月の夜火星と夢が同じ距離
宿帖は丸文字ばかり若葉風
新潟県
さけの子がもどってくるときオレ高一
つかまってたまるもんかと赤とんぼ
16才日記にさえも嘘をつく
蝉しぐれ炭酸水の中のよう
春一番子象の耳をふくらます
富山県
ヤモリとにらめっこぼくまけました
マラソンのゴールは近い一人ぬく
父の誕生日両手でお酒つぐ
さよならの頬をかすめる花ふぶき
富有柿空もろともに掴みとる
石川県
かれ木たち落ち葉のコート作ろうか
そばすする音と同じに鐘鳴った
核兵器無くせば広がる笑顔の春
林檎色している秋をどきどきと
嬰児の湯浴み緑をくずしける
福井県
春の滝緑のこけが生き返る
のぞむもの寄鍋のような家族かな
石段は武士の歩幅や初詣
木枯しは一人の夜に美しい
鼻先に紅葉を付けて鯉浮かぶ
山梨県
満開の桜の海におぼれそう
俺の汗光を帯びたユニフォーム
眠らぬ街そんな故郷が大好きです
夕暮れの風景染める赤とんぼ
鳳仙花はじけた夢がまた芽吹く
長野県
天井の木目親しく長い夜
雪山にぽうと明かりがふたつみつ
早蕨のぐうちょきぱあと伸びゆけり
肩ぐるま湖面に映える夏花火
いっせいに鯵が振り向く水族館
岐阜県
稲刈った切り口ぼくを見上げてる
太陽に礼するように稲しばる
バレー中継母の青春よみがえる
カイロよりその一言が暖かい
蜂飼ひは蜂にやさしきことばかけ
静岡県
狛犬が静かに吠える冬の月
ぐみの実を口にほおばり友と駆け
郭公の呼ぶ声のまま深い森
桜咲くそっと目を閉じ焼きつける
足音が静寂を割る試験室