伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第十五回
佳作特別賞
鶏鳴くや霞がつなぐ記紀の山
烏瓜宙ぶらりんのままがいい
シクラメン過保護に育て萎れけり
いま拭きし眼鏡の中を鳥渡る
飛石の青く濡れをり春時雨
くたくたになるまで吹雪くつもりかな
啓蟄のぬぬっと月の上りけり
春光を切れ切れにして貨車通過
再会の声華やぎて古希の春
硝子屋が来て秋風を絶ちにけり
太陽の裏がわ知らず蚯蚓果つ
山川を敬う針の供養かな
ネジ花に幼き恋を重ねたり
冬晴れや地球を吊すアドバルーン
勝敗の敗が集まり縄のれん
余生とはこんな音です若菜摘む
お母さん女の一生花咲けり
片隅の廃車彩る落葉かな
スキップの少女花野の雲に乗る
木枯しは新月残し海へ去り
胡蝶蘭頭を垂れて主張する
弱音を吐いたので枯木になったの
蝶々がとびたちテニスはじまれり
ストローの先から夏が広がりぬ
ウエハスの橋は渡れぬ星月夜
振り出しへ戻る話に茶を替える
あいまいな地球に跼み藷を焼く
母に逢ふだけで足りたる秋まつり
よだれ掛ずれし地蔵の遅日かな
和菓子屋の長き暖簾や大西日
宿り木を掲げ冬木の新体操
少年の心を開く赤とんぼ
陽よ風よ我が天職と踏む大地
太陽を沈めて海は知らぬ顔
朝焼けを独り占めして夜勤明け
待つことが見送る者の年始め
風止めば街に残暑が住み残り
姿見の中に入りて春惜しむ
鯨尺母の手擦れか一葉忌
かくれんぼ見つかりやすく孫を待つ
ふるさとは雪に埋れて干菜汁
コンビニで我が古里の匂い買う
桜貝ひとつ拾へば秘密めく
ジャンケンの後出しをする春の雷
籐寝椅子尻のあたりが東京都
菖蒲田の風筋にあり抹茶席
宝物抱いているよな日向ぼこ
蛇衣を脱いで遠くがよく見へる
口下手がせめて笑顔で人に逢う
もう一度歩き直してみる落葉
