伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十五回
佳作特別賞
二重跳びつづけてできた春の午後
畳んでひらいて畳んでひらけば春でした
ゆとりない眉間がつくる縦の皺
あの恋の深さはあおき通り雨
うなだれるジャンパーふっと鉄匂う
さよならと言って大根ぬかれけり
鍋囲む湯気の向こうに犬の鼻
雨あがり雫に宿る小宇宙
ぶらんこを漕ぐや現在過去未来
温泉でハァとつかれば生き返る
微笑んで花見の後は聞き上手
雪遊びする子まぶしむガラス越し
露天風呂名月先につかりける
祖母とするクロスワードの様な会話
試着室一つ小さい服を持ち
吉凶をたして二で割る初詣
三段の滝より冬日降りて来る
海岸に取り残された白いパラソル
寺男冬のすべてを掃き清む
点になる紙飛行機よ春の果て
絵手紙のにじみて届く春隣り
切り傷の痛みなつかし竹とんぼ
月下美人異界の扉開きけり
思い出を今は野ざらし古机
石の上悟りを開く赤とんぼ
ほんのりと窓辺の雪に癒されて
残り柿天をあおいで小鳥待つ
地球から滑べり落ちそう春一番
手のひらが湯呑みの形に暖まり
ホタル灯の温度のような会話聞く
夏野菜置いてちりんと母去りぬ
雛の日や母に寡黙の刻流れ
温暖化たまには見たい雪景色
ゆっくりと流れる時間数え詩
防災の日机の下の一年生
雨戸開け目も口もあいた雪の庭
ため息の数だけ群れて水中花
とりあえずとりあえずとて年を越す
川底の地球のかけらを持ち帰る
褒められし娘を冷やかして温かい
花見れば我も我もとクシャミする
雲まばら稲刈り人に笑みこぼれ
立つ鳥がほうきを持って大掃除
桜咲くリベンジかけた花開く
さくらまつ合格をまつじゅけんせい
秋深く色染めゆかし山の木々
保育器の孫渾身の大あくび
褞袍着てダリもピカソも大嫌い
目覚ましに腕だけ伸ばす白い朝
太陽が欲しくてシクラメンを買う