伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十五回
佳作特別賞
荷造りに入りきらない夏模様
前後左右冬将軍の暴れぶり
霜柱ざくざくなんだか懐かしい
クレヨンをこすったような風の空
息よりも白いコートを身にまとう
耳元で海へと急かすせみの声
十月は金木犀の瓶のなか
心には言葉にできない文字がある
帰宅して部屋のにおいに安堵する
焚火の火なぜかみんなを笑わせる
鵙日和今朝新らしき定期券
せっかちで願いも言えず流れ星
真新しノートに一文字春の風
福袋夢も一緒に買ってみた
雪季市あかき耳朶座りいる
長電話ちょっと傾くオリオン座
つないだ手そこから感じるあたたかさ
遠距離の貴方がいる場所桜舞う
引き出しを開けては昔の夢探す
泣いた後天使のような寝顔かな
ほっぺたがりんごになった寒い日々
冬帽子ちゃっかり猫の指定席
人ごみで影を探してまだ孤独
母の背の今は小さき牡丹雪
安らげる時の流れに秋香る
初雪やポストに向かう靴の跡
水たまり自分をつかむあめんぼう
ゆず風呂でアナタによく似たゆず見つけ
冬空にはばたくきみの星ひかり
川の字がちょっと歪んで夏の夜
葱坊主母に頭痛の種がある
ひな人形はらりと照らす月明り
形見わけ祖父の俳句に胸うたれ
葉が揺れる子供が走る花畑
サンダルのつま先眩し夏は来ぬ
頬づえをついて未来を透視する
雪の輪にあの日のドキドキ閉じこめて
桜色の嘘を知りおり春の山
玄関に小さな靴が増えた今
春雨や母の鏡台引き継ぎぬ
虹を見たもう泣かないと決めた日に
カーテンの向こうに未来らしき朝
コトコトと愛を煮詰める母の唄
春雨や銀の音色を栞とす
晴れたから旅に出たのか雪だるま
影探す遊びを消したビルの谷
冬の空ふと足止める澄んだ青
陽だまりの猫にあくびうつされる
真夜中のどしゃぶり大勢でなにかいってる
夕焼けにもう秋風が織りこまれ