伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十三回
佳作特別賞
老犬と犬語で話す日向ぼこ
赤とんぼ単語のように止まる石
目の力抜いて八月十五日
金魚売る袋の水のまろきかな
唐辛子吊るし貧乏しています
玄関に春が来ているベビー靴
ヨット少年もっとも雲に近くゐる
雪が降る他人ばかりの本籍地
雪国が好きで雪とは戦わず
残る柿落としますよとからっ風
会社去る猫脊の脊に花吹雪
音たてて星座満ちくる穂高岳
ぶらんこに蹴とばされゐる富士の山
津軽の色になるまで林檎みがく
イソップの日が照りはじめコートぬぐ
少年に主将のリボン夏に入る
万緑の奥からとどく応援歌
二階には二階の暮しさんま焼く
妻の置くお茶のリズムの五十年
真っ直ぐな水仙だから怖いんだ
いが栗をサッカーにして下校する
遠吠えの細く消えゆく寒の月
凧上げて日本の空戻しけり
切り口のそろふ水菓子夏座敷
カットグラスに朝日届きしさくらんぼ
地雷なき野にきらめいていぬふぐり
残照にわれも花野の彩となる
地雷なき田に爪立てて草を取る
売れ残る金魚大きく育ちけり
おとうとに伝言がある寒雀
琴座から白い音符の流れ星
水仙をかばう庭師の脚さばき
冬桜手話で見送る交差点
全身をつつむ青葉に山仕事
聴診器まるめてただの風邪という
風船がするりと自由求めけり
燕来る用意のありて美容院
年賀状幸せそうな声がする
もてなしの新茶に添えし国訛り
紫陽花や色の異なる人に逢ふ
自転車を歩かせてゆく桃日和
昼厨ぱきぱき剥がすキャベツの葉
放水のホース一直線にのびて夏
残さるる皿のパセリも影をもつ
海釣りの竿一列の日永かな
難しい漢字はかなで春便り
草原に大の字に伏せ地球抱く
減反となる田を守り老いにけり
弁慶もほのかに匂ふ菊人形
野の雪に転び大きく笑いけり