伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十五回
審査員賞
ひさしぶりのちゅうしゃ目つむる
その場、その時の気持ち、感情が、そのまま俳句になった。句は七歳の日の詩情となって読む者にもリアルに伝わって来る。俳句という詩形が持つ、個性の強さ。そして、内容の深さにも関わらず、軽やかな響き。まるで短編小説のようですらあった。
音楽家頭の中が楽器だな
水元さんの俳句は、楽器演奏の本質を言い得ています。指の速さや正確さよりも大切なのは、どのように曲を解釈し、どのように表現するかで、いずれも頭の中のことなのです。まさに、音楽家は「頭の中が楽器」ですね。
ごみ出しのぼくをはげます流れ星
夜のゴミ出しは暗くて心細いですよね。お手伝いも大変。でも、頑張るあなたを見ている人はきっといます。流れ星もそう。一人じゃない、そう思えた夜を優しくシェアしたこの句は、誰かをはげます力を持っています。
家に旗明るい魚が泳いでる
祝日の日章旗でしょうか、住宅展示場などに飾られる万国旗かもしれません。明るい日射しにはためく旗が、「明るい魚」の泳ぐさまに見えたと読み解きました。季語はありませんが、この感知そのものが素敵な詩です。
売店のちょっと陽気なサングラス
一昨年、初めて入院と手術を経験しました。幸運にも命にかかわることではありませんでしたが、それでもちょっぴり不安なとき、売店の色とりどりの商品が目にも心にも嬉しかった。その記憶とともに、忘れがたい一句です。
露天風呂おばさんたちの魔法陣
露天風呂を楽しむおばさま方が輪になってしゃべっている。あるいは点々と自分の好きな方向を見ている。なんにせよ、それを魔法陣と崇めるように、または微笑むように見ている作者の優しさがいい。面白い。
夏来るこんな地球の青を聴く
音の色、と書いて「ねいろ」。多彩な音色を出せるべく日々演奏の表現と向き合っている身にとって、地球の青を聴くという表現に刺激を受けました。視覚・聴覚の枠組みを超えたスケールの大きさを感じさせられます。
まだ去年にいたいと猫に言ってみる
正月を前にして、新しい年を迎えることの緊張にたじろいでいる。ただし、そんなに強い緊張でもないので、身近にいる猫にむかって、ちょこっとこぼしてみた。共感。
添い寝する犬とねこにも多様性
飼い犬と猫が、仲睦まじく添い寝しています。同じ屋根の下で暮しているうちに、お互い家族と認め合うようになったのでしょう。こういう異種同士の交流感にも生きものの多様性が感じられます。