伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十五回
佳作特別賞
カレー粉の砂漠おどって春一番
緊張のスーツ桜に見守られ
入船の昔を偲ぶ桜かな
スノーボード毛布みたいな雪の花
下町のコロッケ二つ川桜
切り取って貼り付けたような今日の月
深夜バス薄きガラスよ雪山よ
小春日や羊は雲に恋をして
太陽に扁桃腺を見せてやる
水彩の淡み菖蒲のしたたかさ
七色のチュールスカートくるり春
若草といわれた姉妹ハツラツと
玄関の靴が大きくなって春
投げ出したランドセルから柿の種
秋の雲稲穂は空を押しあげて
夏の雲石鹸五回分の泡
寝ぐずりの吾子の甘噛み青葉風
口だけで伝える地図や秋の風
早くなる日の出に春を待ちわびて
故郷に都会を脱いで降りる夏
彷徨えるエントランスの黒揚羽
コスプレの靴底厚し春霙
カヌー漕ぐ水面は真にバリアフリー
床暖房へ身体ひらたくなりたがる
葱坊主棒立ちといふ力かな
もう少し歩いてみよか冬帽子
くすくすと笑う羅漢や落葉道
アイスティー東京駅を見下ろして
春連れて路面電車は早稲田まで
下駄箱のトロイメライや耳袋
天高し土手に寝ころび平和論
日脚伸ぶ掛け声揃ふグラウンド
草の芽や庭のつづきの太平洋
枝豆をつまむ音符を目で追いて
ちんあなごくっしんしてる水の中
きのうえにとんぼがとまったきんようび
はじめてのヒールのブーツママみたい
ゆきだるまなきむしすぎてかわいいよ
ふゆやすみえほんをよんでゆめのくに
いせえびがおせちの中でおこってる
しゃぼん玉じぶんが中に入ってる
まどべから流れるピアノ春をよぶ
真っ白い冬の宝石雪の色
白いいきたき火のけむりとまざってく
てつぼうをのぼりきったら冬青空
昼ねするメロンのあみのハンモック
ふくろうの顔がうしろへいってるよ
たまごからようせいうまれた冬うらら
おとうとに九九を聞かせる冬はじめ
スキーはき光のはやさでころがった