伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十五回
佳作
サイダーや係り結びの難しさ
散歩道青い水玉いぬふぐり
許さないよコーヒーゼリーお父さん
さむいよるなんかさびしいなんでだろ
振り向けば言葉こぼしてぼくは鬼
大晦日橙色の爪の先
暑過ぎるセミの悲鳴が聞こえるよ
卒業式「好き」の二文字に口籠る
さくらもちあかごのほほとうりふたつ
桜まつり雨天決行雨女
逃げ水や幼き頃に見た夢か
本気だす汗がしたたる体育祭
静電気静とかくのに痛すぎる
曇る窓にこちゃんマークかいてみる
雨上がり地の鏡には虹と水馬
累乗根数の奥深く夢の芽吹き
秋桜は今日も私をお見送り
雨蛙気分を変える取りかえる
夏休みメラメラ燃える地平線
寒空に滲むインクと赤レンガ
からっぽの井戸を覗きし夜の秋
落ちないで手花火で競う願い事
青年期過ぎ行く時間新幹線
父と兄背中見続け決めた道
いつまでも休むことないせんぷうき
消しカスとシャー芯月の光刺す
獅子舞が厄喰う為に練り歩く
冬の町甘ずっぱいなキラキラだ
ドライヤー乾かすほどの髪も無く
寒い朝きれいな雪が一面に
消しかすと不意に涙が流るる夜
カッターで削る4B魔女の杖
新築の庭の紫陽花まだ無色
雪、渋谷ビニール傘の下に僕
針金を曲げるペンチの先に錆
鳴く虫もマグマ育てる土を踏む
花びらを踏まないように千鳥足
新卒に上司の背中は大きくて
秋近しお釣りに記念硬貨あり
君の街包む想いと春一番
筒音が柏手がわり奥の宮
東京に雪降る夜は母想う
「もう少し」嫁のお腹の暴れん坊
一年中大活躍の扇風機
せみのこえやまのあんぜんしずかさよ
穂すすきを集めて束ねて魔女が飛ぶ
台風の目にゐてピアス穴疼く
夕月夜ブランコ立ち乗り二十九歳
絶望の南栗橋深夜二時
灼熱の長靴伝いネギ畑