伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十五回
佳作
かるたって習字みたいだ昔の字
ひとり言セミが鳴くのと重なるよ
秋の月あそこのいねはきらびやか
目が移るバレエ帰りのレストラン
ふゆ道を歩くすがたはペンギンだ
大寒に狼煙を上げる冬の炭
白おこじょ一列並んで背えくらべ
雪降れば耳は授業目は窓に
ふくわらい紙の表情に似ていく子
雪道の母の運転アトラクション
冬空に響き渡りし弦音かな
お~いママ背中がパパより大きいよ
雪積もり体が重い森の木々
しもやけで足がまるでサツマイモ
ホッケーでパックと一緒に風にのる
心はね傷がついたらもう消えない
Vの字で空を飾るは渡り鳥
誰そ彼は影しか見えぬ長い道
テスト前広げたノートの上に猫
秋の夕外壁支配トンボ軍
襟巻の中で隠れる赤い鼻
木陰からそっと顔出す宇宙の王
旅をして街を見わたすガンの群れ
わかさぎを釣る竿動くはずもなく
タブレット国語辞典が消えてゆく
そうめんは作るの簡単だが飽きる
悴んだ指先ボタンと格闘技
父さんはめちゃめちゃに強いくまごろう
汚れゆく地球は今日も自転する
赤いのに目には見えない恋の糸
いつまでも机と一緒くたびれた
青い道ペダルを踏みこみ駆け抜ける
ザーザーと呼び起こされる除雪車に
あの人の笑顔が浮かぶ恋しくて
卒業やゴミ箱に全部捨ててやる
おさがりやひな人形とにらめっこ
降りしきる春雨ときに晴れやかに
すいか割りここだここだと騒ぐ君
穏やかな町にはきっと馬がいる
帰郷してホームからする潮のにおい
長ぐつが畑にしずむ雨上がり
大雪は父が留守時にやって来る
寝て食べてこたつにダイブ負の連鎖
友達とやりたいことが雪のやう
マスクなしみんなの顔が良い顔だ
大きめの長い欠伸と年を越す
ひとりなら心も寒いふたりなら
家族とはすぐそばにある永遠の愛
氷柱折れぐずる弟空模様
夏の朝姉ちゃん待ちの洗面所