伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十三回
都道府県賞
愛知県
バリカンでぼくの頭もころもがえ
菜の花のにおいをたどれば祖父の家
せみしぐれ今はいらない置き時計
初蝶を離したがらぬ花ばかり
かろやかに音を散らして夕立来る
三重県
妹がおしゃべりしてる風鈴と
太陽に届けと朝顔つる伸ばす
サドルから立ち漕ぐ朝や山眠る
落ちそうな出窓に並ぶつるし柿
満月や退職前夜の靴磨き
滋賀県
鉛筆の芯が言葉に変わってく
頬紅や昨日より濃い冬牡丹
かまきりよいつも立派でなくていい
現世の裏も透かして冴ゆる月
やっと湧く句想を壊す嚔かな
京都府
けん玉のひもちぎれるまでお正月
のちの月となりの家はカレーかな
妹の小走りの先年賀状
四畳半ここが宇宙と猫に言い
少年に見つけてほしいかぶと虫
大阪府
またのぞきあまのはしだて雪の中
梅雨の雨そっと外したヘッドホン
蝉しぐれ献血注射の針ひやり
小吉や喜び方が分からない
スケッチの余白は秋の風となす
兵庫県
かみなりを家でながめる天体ショー
あの夕焼人生に残る一品よ
餅つきの余韻が残る二の腕に
雷を撃ちかえしたいような恋
ヒール脱ぎ少し銀河の遠くなる
奈良県
お月さま歩くたんびに場所ちがう
雨に散り道をいろどる大手毬
シャンプーの杏の匂いで春が来る
東京の空にもとんぼ内定式
悴みて許すこころの半開き
和歌山県
青空もみどりにそめるお茶畑
白い息体からぬけどこへいく
万歩計風の中なる岬あり
乗り過ごし気づけば異郷春うらら
風鈴の音や縁側透きとおる
鳥取県
影伸びる夕日と月とカレーの匂い
方言を捨てた案山子が立つてゐる
父さんもじいさんも婿冷奴
夕焼けを飲み干してなお海光る
無花果にブラックホール見つけたり
島根県
サンダルと海へ行こうか足はずむ
水平線秋を両手に一直線
泥んこに強く根をはる土筆かな
大好きが包みきれないオムライス
凍て空やできない理由は飲み込んだ
岡山県
幼犬の愛嬌振りまき春来たる
スーパームーン大きくなっても触れられない
冷蔵庫一番手前に立つ卵
十代は蛍のようなものだった
わたしだけ分かる印を初暦