伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十三回
佳作特別賞
文化祭秋は寂しくなんかない
金色の稲穂でできた秘密基地
矢を放つその瞬間の肌寒さ
旅立ちの瞳はまるで春の星
凍て空をねぐせアンテナ受信する
面をうつ踏みこむ足で冬感じ
寒いけど今日もスカート二回折る
麗らかな風と弾けた靴の音
大掃除家が奏でるオノマトペ
夏の夜の結う髪の毛と下駄の音
またくるね酸っぱいミカンとおばあちゃん
オリオン座僕だけ知ってる三連符
雪とけて忘れた屋根色思い出す
宿題を横目にとける氷菓子
湖に月の兎が落っこちた
学び舎の響く師の声目借時
慎重に一歩踏みだす初氷
宝箱何もなかった春の風
向日葵に似てゐる人の早口よ
夕立や僕には帰る家がある
焦燥は夕立のせいにしてしまえ
火がついた手持ち花火と恋心
軽トラを追ひかけるごと稲穂波
切なさに少しの猶予黄昏時
ランドセル泥と希望とお弁当
他人めく鏡の私ヒヤシンス
恋文を胸にしまって春となる
ちらちらとこっちを見てくる扇風機
静寂は交響曲だ星月夜
空き部屋の窓磨かれず花八手
パソコンの息もあがって夏の風
イヤホンが海の匂いを運び夏
婚活のきっかけは今日誕生日
無防備のかかし案ずる三十路前
そよ風の香りが決める模様替え
同僚も上司も猫ならいいのにな
勿忘草乗せ引っ越しの車行く
ただ単に月が綺麗と伝えたい
豆電球みたいに私光りたい
やっと寝たでもすぐ見返す子の写真
菜種梅雨気分華やぐちらし寿司
うつむいていても春風吹いてくる
五線譜に小鳥が奏でる茜空
子どもの名考え徹夜春隣
君といて赤信号を好きになる
冬晴れに恥ずかしがり屋の富士ひとつ
最果ての岬に届く1いいね
白シャツが桜のトンネル入学式
ひらがなでお喋りしてる春の猫
水溜りの空を目掛けて銀杏散る