伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第三十三回
佳作特別賞
冬の朝みんなで繋げた糸電話
秋の夜のページ進まぬ単語集
気まずくてマフラー直す帰り道
わたし海月を映して輝くの
清楚なる空の目論見雪化粧
雪降りし母校の庭は静かなり
雪道の姿勢で判る出身地
冬風にギター片手で乗せる歌詞
海岸線江ノ電にさす春西日
やわらかな灰色の冬空が好き
元旦の新聞くらいは読んでおこう
飛び込み台覚悟の水面積乱雲
傘の上積もった雪の万華鏡
賑わいの足跡残す粉雪よ
里帰り電車の中から流れる絵画
長距離走聞こえるのは自分の呼吸だけ
秋の夜長色が変わった一冊の本
背伸びして雪が嫌いと言ってみる
天の川埃かぶった望遠鏡
志望校母校となった春の空
制服を鏡でチェック桜咲く
団欒を守る呼び声火の用心
カップめん冬のシンクに音が鳴る
薄氷割って金魚にエサをやる
溶けそうな青のキャンバス昼の月
雑踏と零度の街をかきわけて
炎天のトランペットのファンファーレ
ガラスの群れから徒歩一分の雪景色
よう地球なんか暑いぞ落ちつけよ
青空を讃え飛び交うツバメの子
マフラーの下でつぶやく英単語
ぼくたちの旅の計画かき氷
列車乗り秋の入日を追いかける
寝坊助が宇宙を微睡む青畳
除夜の鐘他郷を歩く帰り道
塾生徒子供ではなくソクラテス
気分乗り円周率を歌い出す
オリオンや一人の坂を駆け下りる
月光をスポットライトに千鳥足
からっぽの炬燵に冬を閉じ込める
ポケットにしまっておきたい銀世界
ぶかぶかの学ランがゆく桜道
スパイクの裏を見ている冬籠
鈍色の合鍵咎める春うらら
飾らせて私の耳もと今日の月
オンライン教授とハモる蝉の声
まろやかに色づく梅ときみの頬
水色の布団の上で平泳ぎ
一瞬の重くなりけり冬の夜
竹馬のパドックだった勝手口