伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第二十一回
佳作特別賞
サングラスはずし小心さらしおり
逆上り落葉も一緒に蹴りあげて
干大根富士見る窓は明けてある
ふんわりと春の匂いがポケットに
ノアの船宇宙へ漕ぎ出す新時代
啓蟄や明日といふ日を持ち上げる
わが歳を置いて帰ろう忘年会
田起しの農夫分厚き野良着かな
貰ひたる独活もて余す妻の留守
梅が香が抱ききれない大伽藍
点と線蟻の住み家をみつけたり
雪の朝メタボすずめの思案顔
待たされて待たして花の命かな
陽炎えるものを形に遺跡掘る
着ぶくれて着ぶくれの子に追ひつかず
合流しまた合流し雪解川
炭足して縁談少し捗りぬ
箱書きに思い溢れる仕舞い雛
日の色を廻してリンゴ剥きにけり
炎昼や叩けば動きだす時計
耕して貧乏神に近くゐる
稲妻に阿修羅の眉の襞深し
夜は星の空を飛びたき案山子かな
楽しげに節約ばなし冬炬燵
寒卵己が重さに転びけり
白鳥の汚れる前に帰りけり
帆をあげて走りたかった水芭蕉
マスクして眼鏡イヤホンややこしや
直角に生きているのだ麦の秋
ひかえ目に風をとらえて江戸風鈴
ケータイを忘れ一日無垢で居る
寒入りや恋も大きくくしゃみする
誰住むや紅葉が囲む生家跡
手鏡に閉じ込められし白菖蒲
駅舎より時雨るる街の闇深む
雨の中一期一会の梅見かな
恐竜の影絵のしのし聖夜劇
先人の智恵はなるほど茄子の花
助手席で転がり回る西瓜かな
萩にふれ盲導犬の立ち止まる
朱の紐の付きし五円や小町の忌
ナゾめいた話窺う蕗のとう
御利益は賽銭借りた妻に行き
菜の花や初めて外へ出た小犬
色ちがふ子猫どれにも同じ影
夫といふ不思議な他人冬ぬくし
曇天に老いの反骨冬木立
なんとなく拾ってしまふ木の実かな
お日さまに笑われ氷柱すぐに泣く
箒目に彩遊ばせる冬紅葉