伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十九回
審査員賞
被災地で生まれた兄ちゃん十三才
十一才の少年の句 あの災害を思い出しました。少年そして、その後に生れた少年は、その時の様子を聞いているのでしょう。元気なお兄ちゃんを見て、喜こんでいる気持が伝わって来ました。
おもちゃ箱整理するたびぬいぐるみの視線
ぬいぐるみの視線については私も常日頃から気になっていた。ぬいぐるみはかわいいだけでなく、ときとして厳しくこちらを監視している。静かにじっと自分を叱責しているような、その目に気づいた感性が面白かった。
青春という名の池に今落ちた
そういえば、ぼくもかつて「青春という名の池」に落ち、もがき泳いでいたように思う。そのことを作者はぼくに強く伝えてくれた。ほろ苦い抒情をありがとう。青春をたくさんうたってください。
せみのようにとてもうるさいクラスです
高校生らしい率直でユーモラスな俳句だ。中小生では「とてもうるさい」とまでは言えないだろう。とくに「とても」が利いている。それと全部口語調なのも軽快で、なんとなく可笑しそうな気分をよく表している。
寂しさも愛のかたちと気づく冬
華やかで、浮き立つような愛がある一方で一見寂しく、激しく燃え立つように見えないながら、ある距離を置きつつ見守って、直接にアクションを起こさない愛のあり方があってもよかろう。全肯定でその人に対するのだ。
編みかけも縫いかけもあり日向ぼこ
疲れて根が続かないのか。編みかけたもの、縫いかけたものが膝や身辺にあって、日向ぼっこをしている、という八十二歳の自画像。一句の思いは深い。表現そのときの感慨を素直に言い取っているのが佳い。