伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十九回
佳作特別賞
一と啼きの仔牛糶られし時雨市
逆立ちの子より零れし木の実かな
大くさめして里山をゆり起こし
柿紅葉虫喰い穴も絵になりて
かまきりの顔をはみ出す眼の寂し
一徹を通す枝ぶりこぼれ梅
干柿にみんな似てくる長寿国
あの顔もこの顔もけふ屠蘇の顔
火の山の裾の集落春待てり
にぎやかに春を吐き出す玩具箱
くしゃみして嚏という字覚えけり
寒卵こつんといのちかがやかす
嘘が言えない秋の水飲んでから
独居して百個余りの寒椿
居据りし関八州の餘寒かな
稲雀散って夕日の残りけり
文字一つ書かずに暮れて秋刀魚焼く
黄色いこゑ海割ってゆく海開
人ひとり点となりゆく大枯野
どの木にも聞き耳立てる春間近
ときめきは老にもありて草萌ゆる
余生にも未来はありて鳥渡る
富士山へ登れぬもよし梅一輪
生きるとは鳴き尽くすこと法師蝉
蟷螂の枯れても鎌を研ぎゐたり
俎板に冬至南瓜の仏顔
おぞうにの湯気立つ中に顔かくれ
青い目が日本姓名のる百年祭
水車秋の落日掬ひあげ
初雪や血縁よりも濃き隣
地の裏に桜も育て移民老ゆ
語らねばことば忘るる日向ぼこ
医師に医学書大地に貝割菜
新年の言葉変らず老いにけり
面外れば父に戻りし里神楽
柚の香の風呂に余生が溢れをり
春岬帽子は海にとびたがり
ハイと言う曽孫の返事桃の花
蕗の薹隣りの分も摘みにけり
笛方の衿に掛けたる豆しぼり