伊藤園 お～いお茶新俳句大賞
第十九回
佳作特別賞
春雨や書かねば俳句消えて行く
ラガー等のどっと居並ぶ足湯かな
無事知らす余白の賀状届きけり
白梅や人より猫の多き路地
栞紐ぴんと伸ばして一葉忌
終章は風の指揮する花ふぶき
開店の旗持たされて雪だるま
静かなりいつも変わらぬ里景色
雪吊りの外れた木から笑い出す
春一番鯨の昼寝破られず
枝打ちて光と風の子が走る
チャンバラの少年老いぬ蜆汁
少女らの笑いはじける桜坂
買わずとも手拍子を貸す達磨市
日向ぼこ家族みんなの手相みる
古代には恐竜なりし羽抜鳥
干した布団が春一番を吸い込んだ
桃の花なにをいのるや小さな手
春寒や右肩上げて生きてをり
水餅の息つく水を新たにす
三界に子の在ればこそ鰯雲
心配は芽が出るまでのフキノトウ
電動の自転車で来るちゃんちゃんこ
古希の春いよいよ遊び盛りかな
海鳴りを聴いて古代の人となる
春の山片っ端から電話かな
緋牡丹の散りて地を這ふ炎かな
吾が陰に母入れて行く炎天下
ジーンズのまろやかな尻稲を刈る
幼子の掌をあけみれば春の風
思い出のかけらも育つ穀雨かな
ひとり分宇宙を確保大あくび
信濃路や若葉の山の押し合へり
武藏野の風音秋に入りけり
高齢者若者よりも腕自慢
柚子の香の立てり冬至湯沸きにけり
長男は自立しました次郎柿
祖父母席設けてありぬ運動会
そこからは地球おぼろかおぼろ月
だんじりに犬も法被でひた走る
空き缶を踊らせ春を告げる風
飴玉で喉をなだめる煤払
雛壇をぬけ来しほどの雛の客
記憶みな翼にあって鳥帰る
白髪染め爪に残して晦日蕎麦
薫風に顔すり合わす放ち馬
干蒲団ははの縫い目が顔を出す
いつ溶ける心に住みし雪女
母の日の母のゑくぼに会ひに行く
億兆の星の一つで豆を撒く
