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受賞作品

伊藤園 お~いお茶新俳句大賞

文部科学大臣賞

百才の笑みこぼしつつ星祭る

東京都 石本 イト 100歳

週三回通っているデイ・ホームで、昨年、七夕をした時に、短冊にその願いを込めて「いつも笑っていられますように」と書きました。百歳を笑って迎える事ができ、長寿をありがたく思う気持ちと、家族への感謝の気持ちで幸せな一日でした。笑顔で七夕を迎えた喜びを俳句にしました。

長寿社会とはいえ、百歳といえばおめでたいことである。その満面の笑みの表情が、目に浮かんでくる。星祭りは七夕祭りのことで、牽牛と織女が壮大な銀河を隔てて出逢う。宇宙規模のロマンといってよかろう。その星祭りを背景として、登場する一世紀を生ききった人の笑顔は、そのめでたさの象徴ということができよう。節目の新年が背景でないだけに、その表情もおおらかである。

小学生の部大賞 (幼児含む)

満月を抱えて父が帰宅した

千葉県 志賀 彩那 11歳

お父さんが帰ってきた時のことです。夜空には満月が出ていました。まん丸で重たそうな満月をお父さんが抱えているように見えました。お父さんの優しい感じを出したくてこの俳句をつくりました。

満月の月の出と共に、父が帰宅したのである。その大きい満月の出現は、出迎えた時の思いがけない光景だったかも知れないが、父にとってはいささか照れくさいことだったのだろうか。しかし「抱えて」という感じからは、満月を「とりこにした」という思いもうかがわれる。しかも大切に扱うからこそ「抱えて」という表現になる。その荒唐無稽さも楽しいし、父のご機嫌ぶり(多少の酩酊を含めて)を感じ取ることも自由といえようか。

中学生の部大賞

三日月に腰かけたがる秋の虫

広島県 新谷 千徳 14歳

ある夕方、犬の散歩をしていると草むらから鈴虫、松虫が空に届きそうなくらい大きな声で鳴いていました。ふと空を見上げると月があり、三日月に憧れているのかなと思いこの俳句をつくりました。

しなやかに伸びた長い葉の上に、鳴く虫が乗って、その背景に三日月がある。あるいは虫は、じかに三日月の反りの内側に、腰かけている図を思い描くことができよう。中学生の作者の構想らしいたのしさと、ロマンを感じる。夜の景で、秋の虫だから、当然鳴く虫を考えるのが自然である。「腰かけたがる」という表現に、作者の思いがおのずからうかがえるところも、目立たぬ工夫が感じられて楽しい。適当にファンタジックだ。

高校生の部大賞

卑弥呼でも私でも吐く白い息

茨城県     青沼 綾 17歳

日本史を勉強していて卑弥呼が出てきました。その卑弥呼は歴史上の人物だけど、寒いとかを私と同じように感じる人間なんだと思いました。そんなことを思い浮かべてこの俳句をつくりました。

「白息」の季語が一句の伏線として、微妙に働いている。歎きとか、弱音を吐くまでに至らないまでも、どこかに挫折感が下敷きになっていよう。自分などは及びもつかない、かの卑弥呼にだって、それなりに嘆きはあるわけだ。内容は違うにしても、現象としての「白い息」は、同じように口から洩らされるのだ。卑弥呼という普通では較べられない存在を、引き合いに出してきたことが面白い。発想の飛躍といってよかろう。清新な句だ。

一般の部A大賞 (40歳未満)

夏雲に負けぬ白さにシャツ乾く

新潟県  吉田 恵子 37歳

ふと空を見上げると夏雲があり、また、シャツが白くよく乾いているのを見るととても気持ちが良かった。そんな軽やかで気持ちの良い思いをこの俳句にしてみました。

一読して、青空に干されているシャツの白さが、目に飛び込んでくる。天上の夏の雲の輝きを引き合いに出したことも効果的だが、比較論をいうのではなく、シャツの眩しいばかりの白さが言いたいのである。当然、風を受けて、裾も翻っていよう。炎天の空の青さも、夏雲の白さも、おのずから背景の位置に引きさがって、主景を引き立てている。三つのものが同じ強さで自己主張をしていない。

一般の部B大賞 (40歳以上)

一筆のこけしの口の寒さかな

千葉県   畠山 猛 84歳

名人がこけしの顔をささっと一筆でかき、口を書いた筆を見て寒さを感じました。こけしの立っている姿を見ると寒さ(静けさ)を感じます。その時の思いを俳句にしました。

こけしの顔の表情のポイントは、一つだけに絞っていえば、一筆の仕上げの唇といえよう。描く順序も含めて、口の描き方一つで、そのこけしが活きも死にもするのである。そのことを思えば、活殺の鍵を握るこけしの口にこめる思いは、芸の「寒さ」ということができよう。失敗しても成功しても、鳥肌の立つ思いなのである。その究極こそは「寒さ」というほかあるまい。季感が底意に働いているが、それを突き抜ける境地であろう。

英語俳句の部大賞

A little dog
looking for broken bubbles
with the tip of his nose 訳/ 鼻先で 小犬が探す 割れたシャボン玉

東京都 新野 智美 15歳

昨年の夏休みの友達の家でのことです。友達の家には小さくて白い犬がいます。その犬の鼻の先でシャボン玉が割れて私はとてもビックリしました。その時のことを俳句にしてみました。

石けん水などにストローをつけて吹くと、気泡の玉がふくれ、虹色を帯びて飛んでいく。それを追う小犬の鼻先でパチンと割れてしまう。においは残るが、影も形もないのに、なおもくんくん探す飼犬の愛らしく可笑しい仕草。よく観察して興じる作者の英語も生き生きとして、すばらしい。

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