伊藤園 お~いお茶新俳句大賞
第十八回
佳作特別賞
小春日の片側だけのバスの客
ままごとの続きの梅を干しにけり
三世代ミレーのように種を蒔き
夏雲をゆるりと撫でて大風車
道草を夕陽が諭す通学路
身の上も少し話して新茶売る
登校の子はまっしぐら鳥帰る
北風や故郷の匂いが鼻を突く
噴き上ぐる水の高さに風光る
母の記に遺るは飢餓の章ばかり
冬の鷺今日一日の点を打つ
春疾風どんとかまえる力石
お日様に吊り上げられし雲雀かな
名前など気にせぬへくそかづらかな
土筆摘むここが地球のど真中
冬眠を忘れて蛙正座せり
折り紙の角定まらぬ建国記念日
ひとりごとの煮詰ってゆくおでんかな
白鳥をかぞえて九十九の母よ
八月を普段の貌して生きている
少年のこゑ率きつれて初蝶来
がやがやと春を押し出す保育園
春風を入れては背負ふランドセル
大鈴のごろんと動く小春かな
転びても喝采浴びる運動会
風の音おどろいてわれ返事する
エンピツを丸く削ってあたたかい
望郷の念のせ流る銀河かな
真鰯や皿に溢れる海の色
団子虫掌に転ろがして子の不思議
いつの世も爭い絶えず鵙猛る
爽という漢字のような女性来る
コスモスに海せりあがる無人駅
なまはげに成りきって声潰しけり
哀しさよ時の流れの戦ごと
足裏は淋しきところ明け易し
近道が遠道となり春の月
うつくしく捌かれてゐる桜鯛
砂が鳴き琴引浜に春きたる
いつよりか夫より先を夏帽子
天界といふ街もあり冬銀河
摘草のそばに水音走りけり
老いの手を優しく包む火鉢かな
シャボン玉中の赤ン坊よく笑う
渾身の力を幹に蝉の殻
鳴き止んで月の真下に恋の猫
ありあまる思いを胸に葱刻む
水たまりぼくを見ているぼくがいる
かたまれば孤独はじける日向ぼこ
極月や化石の如きペルシャ猫