さんかんびあたまのうしろあつくなる
俳句ははじめてです。お母さんから教えてもらって指を折りながらいっぱい書きました。参観日でお母さんに見られて恥ずかしかったのを思い出しながら書きました。おばあちゃんと先生に見せたら「いい」と言ったので出しました。
この作品には特に季節感があるわけではありません。しかしそれ以上に、後ろからの父母の視線を感じ、緊張して、なんとなく恥ずかしくて…といった心情を「あたまのうしろあつくなる」という、大人では思いつかない(忘れていた?)感覚的な、作者自身の言葉で率直に表現されています。
ラジオを消すゼラチン質の闇の音
夜、ラジオを消した後の闇の中の静かな気持ちを表現しようと思いました。この句はすんなり出来ましたが、空気の流れが止まった様な感じを出すのに「ゼラチン」にしようか「寒天」にしようか、ちょっと迷いました。大賞という思いがけない賞をいただき驚いています。
おそらく季節は晩春でしょうね。秋ではないと思います。この季節独特のどろんとした、静かな夜の雰囲気を「ゼラチン質」「闇の音」という言葉で的確に表現しています。伝統的な俳句ではあまり使わない、どちらかというと小説や詩に近い表現方法といえるでしょう。本当に静かです。
春の嵐は異形となりて街を撃てり
春の嵐を私なりに表現したつもりです。去年の5月、帰宅途中に突然襲われた嵐に、強烈だけれども恐怖心は無く、むしろ清々しさを感じました。春の嵐が若者の勢いであるならば、街は頑迷な老人と言えるかもしれませんね。前回の佳作に続き、今回は大賞をいただきありがとうございます。
春の穏やかな天気が急変する様を「異形」と表現していますが、単に気象現象だけでなく、今の社会をも風刺しています。「春の風」という柔らかさと「街を撃てり」という力強さのコントラストが「異形」を一層強めていますね。優しさと荒々しさを併せ持つ春の嵐…優れた感性を感じます。