過去の受賞作品

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伊藤園 お~いお茶新俳句大賞

文部科学大臣奨励賞

星の夜は暗闇までも透き通る

千葉県 荒井 晶子 14歳

冬の夜に塾からの帰宅の途中で、自転車をこぎながら星空を見上げたときに、「今日の星は普段よりキレイだな、星が光っていると空も透き通っているな」と感じた気持ちを俳句にしました。

「星の夜」というのは、澄み切った夜空に満点の星が、まるで月夜のように明るくきらめいている秋の夜のこと。その明るさが日頃は陰のようになっている夜の暗闇までも、光の中で浮かんでいるように鮮明に見えているのである。結句の「透き通る」という表現が適切で、この句全体を巧みにカバーしている。

小学生の部大賞 (幼児含む)

キャッチャーの前を横切るしゃぼん玉

埼玉県 増尾 惇一郎 11歳

僕はソフトボールをやっていてポジションはキャッチャーです。これは実際にあった風景なのですが、試合中に自分がキャッチャーをしていると、横で友達がしゃぼん玉を吹いていて、自分の目の前を横切りました。試合中なので真剣になっていたときに、突然ふわっと現れたので「あれ?なんだろう?」と不思議な気持ちになりました。

動画のように動きのある句で、ユーモラスな味が出ている。横切るしゃぼん玉が、まるで生きているように試合に参加しているのが、おもしろい。またそのしゃぼん玉のことだけを言って、全体の景を思わせるあたり、かえっておかしみと想像性を生む。ちなみに“しゃぼん玉”は春の季語とされている。

中学生の部大賞

国語辞典開いたところ「初夏」だった

愛知県 宮崎 友恵 14歳

家の机にはいつも国語辞典が置いてあります。作品を作った6月頃に、何か調べ物をしようと思ったわけではなく、何とはなしに国語辞典をパラパラとめくって開くと、「初夏」という言葉が目にとまりました。学校で「初夏」をテーマに俳句を作ろう、というときにこのことを思い出しました。

偶然性のおもしろさを強調している。何とはなしに国語辞典を開いたところ初夏の項が出てきたという。何とはなしに辞典をめくった作者にとっても、記憶に残る偶然であった。また時もまさしく初夏の頃だったという話も付け加えて鑑賞してみたい。偶然性がヒント。

高校生の部大賞

ゆびきりを見とどけ帰る赤とんぼ

広島県 谷田 真弓 18歳

田舎の秋、子供たちが「また明日も遊ぼうね」と指切りをして帰っていく。その子供たちの後姿を赤とんぼが遠くから見ており、子供たちが帰って行くのを見届けてから、とんぼも帰っていく。作品内の風景は実際の風景ではなく、田舎の風景をイメージしてつくりました。

赤トンボをアキアカネとも言う。山から平地へ移動して人にまつわるように小さな群れをなして翔ぶ。種類は多いが人なつっこい。ここでは若い二人のゆびきりげんまんをして別れるまでを見とどけて山へ帰ってゆく赤トンボは、秋という季節の付添人と言える。

一般の部A大賞 (40歳未満)

ミュンヘンの雪で切手を貼りました

兵庫県 永原 仁 28歳

冬に行ったミュンヘンの旅先から日本の友達に手紙を出そうと思いました。そのときミュンヘンはすごい大雪だったので、「この雪をそのまま送ることはできないけれど、切手を貼るのに使ったら雪を届けることができるかな、雪も一緒に届けたいなぁ」と思い、実際に日本の友達にエアメールを送りました。

雪で切手をぬらして手紙に貼った。それがミュンヘンであることで面白い。ミュンヘンはドイツ第三の都市でバイエルン州の首都、ビールの名産地、若き斉藤茂吉が、その地の大学に留学した逸話と歌が有名。

英語俳句の部大賞

A dandelion
while standing on tiptoe
waits for the wind 訳/ タンポポ 爪先立って 風を待つ

茨城県 小室 竜哉 17歳

このタンポポは黄色い花の状態ではなく、開花後、実を結び白い冠毛の生じた、いわゆる絮の毬となっている。種子を飛ばそうと、しきりに風を待っているのだ。第2行の“standing on tiptoe”が草の身となっての生き生きとした表現で見所だ。

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